2004年にデビューするやいなや、タイで最も権威ある音楽誌『Season』が主催する“Season Awards 2004”で新人賞を獲得した実力派、buddhist holiday。ミーハーな音楽があふれているタイの音楽シーンの中において、確固としたポリシーを感じさせる彼ら。70年代のブリティッシュロック風サウンドに、ジャズやインド音楽などを取り入れた一筋縄ではいかない音楽性は耳の肥えたリスナーに強く支持されている。また、1回、2回と繰り返し聴くたびにいぶし銀のように味わいを増していくようなサウンドが魅力的だ。そんなbuddhist holidayが、8月19日・渋谷club asia p、21日・CLUB24YOKOHAMAと、日本での初ライブを行った! ライブ前に、メンバーのティ(Vo&G)、エーク(B)、サコン(G)と、サポートドラムのジャーにインタビューを敢行した。

まさかこんなに早く日本で
ライブができるなんて夢にも思わなかった

── 今回、日本でライブをすることになったきっかけを教えてください。

ティ : いつか日本でライブをやりたいなーって思っていたんだけど、それが運よく日本でライブができるという機会を与えられて、それでメンバーみんなで一緒に日本に来たんだ。

── みなさんは日本に来たのは初めてですか? ティさんは今年5月に代々木公園で行われたタイフェスティバルのときに見かけましたけども。

ティ : あはは、そうなんですよ。タイフェスティバルのときに初めて日本に来たんです。すごく楽しかった。

サコン : 僕は3回来たことがあるよ。最初は大学の時に来たんだ。大学の吹奏楽のグループにいて、その時はギター奏者として日本に来たんだよ。あと、先生としてもグループを引率して来たこともあるし。それで大阪と浜松に演奏に行ったよ。最初に行ったのは浜松だったかな。

エーク : 僕は今回が初めてだよ。

ジャー : 僕は日本に来るのは3回目。1回目と2回目は子供の時に家族と一緒に来たことがあるよ。あと、僕はアメリカに留学してたんだけど、タイとアメリカを往復する飛行機が成田経由だったんだ。でも、日本に入国はできなかったんだけどね。

── 今回、日本でライブをすることになったきっかけは何ですか? 今回のライブイベントの資料を読んだところによると、5月に来日した時にティさんがタイフェスでカラバオがライブをやっているのを見て、「ぜひ自分も日本でライブをしてみたい…」と、ぼそっと発言したことが発端になっているそうですが。

ティ : そうなんだよ。友達とみんなで飲んでいる時に、確かに「日本でライブをやりたい」って言った。でも、その時は「自分もカラバオのようにいつかタイフェスティバルでライブをやってみたい」って言ったんだ。5月のときはひとりで日本に来たけど、今度はメンバー全員で日本に来たいなぁと思って。でも、この発言をした時は本当にただの漠然とした夢でしかなくて、「日本で絶対にライブをするぞ!」みたいな、明確な目標があったわけじゃないんだよ。だから、とんとん拍子のうちにこんなに早く日本でライブができるとは思ってなかったよ。

── そうだったんですね。日本でライブをするということで、どんな気持ちですか?

ティ : 去年僕たちはタイでメジャーデビューしたばかりだし、だから全然日本での知名度はないけど、とにかく早く日本でライブがしてみたい。でも、ものすごく緊張するな。日本でライブするというのは漠然とした夢でしかなかったのに、ライブをする機会を与えてもらえてメンバーみんなで来日することができて本当にうれしいですね。今回、僕たちが日本に来れることになったのは、「Guru-Guru Rock」の4人の方無しにはありえなかったよ。Mさん、Iさん、Kさん、Tさんには感謝の気持ちでいっぱいだよ。

── その4人の方たちとはもともとの知り合いだったんですか?

ティ : Mさんとはもともと友達だったんだ。Kさんとはタイで会ったことがある。IさんとKさんはタイフェスの時に会ったよ。

── なるほど。彼らと飲んだことがきっかけになって、今回のイベントが実現したんですね。では、他のみなさんは日本でライブをするということに関していかがですか?

サコン : 僕もティと同じだけど、とにかく緊張する! このひと言だよ。

エーク : いやー、なんだか今ここにいても事情が飲み込めていないんだ(笑)。まさか日本にライブをしに来れるとは思わなかったよ。なんだか夢みたい。

ジャー : 僕は特に何にも考えてないよ(笑)。いつも通り、精一杯がんばるだけかな。でも、日本でライブできるなんてうれしいよ。

buddhist holidayってバンド名は
アジアンな自分たちの音楽性に合うと思って付けた

── えっと、今回、初めてbuddhist holidayを知る日本人のために、buddhist holidayが結成されたきっかけ教えてもらえますか?

ティ : 僕たちはもともと友達だったんですよ。

サコン : 僕とエークは大学が一緒だったんだ。

ティ : それで、僕がタワーレコードでバイトしていた時に、エークもタワーレコードで働いてて、それで意気投合したことがきっかけかな。

── 3人が出会う前も、それぞれバンド活動はしていたんですか?

エーク : 僕はそれまではずっとCD屋で働いてて、全然バンドはやっていなかったよ。

ティ : 僕もそう。ずっとバイトばっかりやってたよ。

サコン : 僕はギターの先生をやってました。

── そうなんですね。じゃあ、ティさんとエークさんがタワーレコードで知り合って、そこにサコンさんが加わってbuddhist holidayはスタートしたんですね。どんな音楽をやろうと思ったんですか?

ティ : 特にこういう音楽をやろうとか、そういう話し合いは全然しなかったよ。みんな好きな音楽のスタイルが一緒だったから、特に話し合う必要もなかったし。みんながイイと感じる音楽をやってるって感じかな。

── みなさんが好きな音楽ってどんな音楽?

ティ : みんな70代、80年代あたりの古いロックが好きなんだよ。好きなバンドはいっぱいありすぎて言えないなー。ちょっと系統違うけど、ビートルズとか、ピンクフロイドとか好きなんだ。

エーク : いろいろ自分たちがイイと思った音楽を聴いてるよ。だからそういうものが自分たちの音楽にも出てきてると思うよ。

サコン : 僕はビートルズが大好きでよく聴いてた。小さい頃はロックが大好きだった。でも、大きくなってからは音楽のスタイルをチェンジして、クラシックが好きになった(笑)。

── えっ、ホントですか? 普通は逆ですよね。子供の頃、親にクラシックを聴かされたりしていたのが、大きくなってロックの存在を知ってハマっていくっていう。

サコン : あはは、そうだね(笑)。でも、音楽を突き詰めて勉強したいと思ったときには、やっぱりクラシックに行き着くんだよ。それでクラシックを聴くようになった。

── buddhisut holidayっていうバンド名にはどういう意味を込めているんですか?

ティ : 友達が突然「buddhist holiday」っていう言葉を口にしたときにピンと来た。僕たちの曲のスタイルに合ってると思ったし、このバンド名いいんじゃないって。

エーク : バンド名に込めた意味はいろいろあるんだけど、難しいなー。言葉で説明するのが難しいよ。

サコン : 直訳したら仏教の休日のことだけど、人によって受け取り方って違う。ホリデーだ休みだーって思って喜ぶ人もいるし、仏教の休日ってことでこの日をとても大切に考える人もいる、仕事の人もいる…。僕たちの音楽もいろいろな受け取り方があっていいと思うし、それに何よりアジアっぽい印象を受けるでしょ。僕たちの音楽もどことなくアジアっぽいというか、オリエンタルな印象だし、ピッタリだと思うよ。

── なるほど。そのアジア風味なサウンドに乗せてどんなことを歌っているんですか?

ティ : ほとんど生活のこと。毎日の生活の中で感じる気持ちとか感情を曲にしてるよ。曲は突然思い浮かぶ。寝る直前、目が覚めた時、シャワーを浴びてる時、人と話してるときとか、ふとした時にピンと思い浮かんで来ることがほとんど。

── 曲はティさんが書いてるんですか?

ティ : まず僕が曲を作ってからみんなに意見を聞くんだ。それでみんなの意見を取り入れながら肉付けしてくっていう感じかな。それぞれのパートについては、それぞれが考えてる。

── メジャーデビューすることになったきっかけは?

ティ : 結成して5年くらいなんだけど、最初は友達のお店とかでライブをやってっんだけど、結成して2年経ったときに、FATラジオっていうラジオ局に曲を送ってみたんだ。そしたらその送った曲が人気が出て、そのラジオ局が1年に1回開催している「FATフェスティバル」っていう大きな音楽イベントに出させてもらえることになったんだよ。それに翌年も参加させてもらって、そして3年目にソニーミュージックの人が見てくれてて、それがきっかけでデビューすることになりました。

── 去年リリースしたメジャーデビューアルバムはどんな内容のアルバムですか?

ティ : とりあえず一生懸命やり尽くしたよ。特にアルバムのコンセプトみたいなものはないけど、1枚目のアルバムだからまずは自分たちのことを覚えてもらいたいという気持ちを込めた。なんていうんだろ、名刺代わりみたいなアルバムだよ。

エーク : そうなんだ。多くの人たちに僕たちのことを覚えてもらえるように、心を込めて作ったよ。

── メジャーデビューして変わったことってありますか?

エーク : う〜ん…、特に変わったことはないかな。インディーズだった頃は何をするにも自分たちが考えて自由にやっていたけど、今はレコード会社に所属しているから、何かをする時に多くの人の意見が入るようになったっていう部分では変わったかな。あとは、ライブをやる回数が多くなってきた。

── 確かに関わる人の人数は変わってきますよね。でも、いろんな人が関わってくるようになって、やりにくくなったな〜っていう部分はないんですか? 「売れるためにこういう曲を書け」みたいな指示があったりとか。

ティ : ないよ。僕たちはその辺けっこう自由にやらせてもらってる。

エー : 音楽でも洋服でもなんでもそうだけど、自分たちのポリシーって大切だよ。

サコン : まあ、考えようによっては会社から指示されるのは、売れてない時には便利かも(笑)。自分がやらなくても会社がやってくれるから。でも、いくら便利でも自分たちのスタイルやポリシーはしっかり守らないと。

エーク : あと、知り合いが増えた気がする(笑)。

── 街を歩いてて気づかれることも多くなったんじゃないですか?

ティ : そうだね。たまには。

エー : うん、たまに声を掛けられることもあるよ。

サコン : 僕は全然ない…。

一同 : 爆笑。

実は1stアルバムの音はイマイチ…
次のアルバムはイイ音でレコーディングしたい!

── ではジャーさんにお聞きします。buddhist holidayの魅力って何?

ジャー : そうだねー。buddhistholidayの魅力はアジアっぽいサウンド。どことなくインドっぽいサウンドかな。それになんとなく懐かしい雰囲気もあって、昔の自分に戻れるっていうか、昔の記憶が蘇ってくるよね。で、ティの書く曲はちょっと悲しくて、切ない気持ちになるけど、でもロマンティックなところが最高。

── ロマンティックってことは恋愛の曲が多いとか?

ティ : (笑)。いやー、彼が特にそう感じてるだけだよ。彼は今、恋がしたいみたいだから(笑)。きっと、彼の今の気持ちと僕たちの音楽が合ってるんだよ。

── ジャーさんが今回、サポートすることになった経緯は?

ティ : 実は僕たちのバンドには女性のドラムがいるんだけど、彼女はまだ学生で来れなかったから、代わりにジャーに頼んだの。知り合ったきっかけは、ジャーがライブをやってるのを見て、いいなあと思って声を掛けた。でも、音楽の話じゃなくてスターウォーズの話で声を掛けたんだけど(笑)。それで散々盛り上がったあとで、「一緒にライブしませんか?」って言ったの。彼はライブする時おもしろいしセクシーなんだ(笑)。

サコン : ジャーはすごくおもしろいよ。彼が言ったことでみんな大笑いすることが多いよ。すごく明るいヤツだよ。

ティ : 見てて飽きないタイプ。ジャーのバンドも好きだし、本人の性格も好きだね。あとかわいい。

ジャー : えっ、僕ってそんな性格だったの? 知らなかった!

ティ : こんなにかわいいのに今恋人がいないんだよねー。もし、ジャーのことを気に入ったコがいたら紹介するよ(笑)。

── じゃあ、募集出しときますよ(笑)。では、最後にこれからの目標を教えていただけますか?

エーク : 次にリリースするアルバムをもっともっとイイものにしたい。自分たちの納得できるものを作りたい。

ティ : 実は1stアルバムはあまり予算がなくて、音的な面で納得いってない部分もあるんだ。とりあえずみんなの目標としては、もっともっといい音でレコーディングしたいっていうこと。日本でレコーディングしたいですね。日本のソニーミュージックさん、よろしくお願いします(笑)。それからまた機会があればぜひ日本でライブをやりたい!

サコン : もっともっといろんな音楽を聴いて自分の中に吸収したい。それでもっともっといい音楽を作りたい。だから、ぜひ日本の人たちにも僕たちの音楽を聴いてほしいな。歌詞の意味はわからなくても音楽は通じるはずだから。僕たちの音楽を聴いて幸せになってほしいね。

ジャー : 自分のバンドでも新しいアルバムを作ってるんで、こっちにも注目してもらえるとうれしいな。それからもちろん、buddhist holidayのアルバムにも期待しててほしい!

Wisut

Profile

写真左からエーク(B)、ティ(Vo&G)、サコン(G)、ジャー(support Dr)。今のメンバーで2002年にバンドを結成。FATラジオへデモテープを送ったことがきっかけに、タイ最大のインディーズフェスティバル「Heineken Fat Festival」に3年連続で出演し、固定ファンを確実につかんでいく。2004年、バンド名を冠した1stアルバム『buddhist holiday』でメジャーデビュー。