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椛澤一(かばさわ はじめ)プロフィール

株式会社リエイ代表取締役。「企業福利厚生施設」運営代行、ホテル業務運営代行、介護サービス、タイロングステイ、リラクゼーション・スパの経営、各種人材派遣など、多岐にわたって事業を展開中。また、日本タイロングステイ交流協会の理事も務めており、タイでのロングステイを普及すべく活動している。

株式会社リエイ
http://www.riei.co.jp/

企業福利厚生施設の運営代行、ホテル業務運営代行、介護サービスなどを行ってきた株式会社リエイ。介護事業を進める中で出会った人々との縁でタイと出会い、ロングステイ事業も進めることになったという。具体的にどんな事業を進めているのか、そしてタイの魅力とは何なのか、代表取締役の椛澤一さんにお話を聞いた。

タイと関わるようになったのは
人の縁としか言いようがありません

遠藤 :もともとタイと関わるようになったきっかけとは何だったんですか?

椛澤 :今、うちにはインターナショナル事業部という部署があるんですが、ここの部署はタイと関わるようになったことがきっかけで始まったんです。収益の部分から言えば、まだまだこれからの部署であり事業なんですけどね。2000年から介護事業をスタートさせたんですが、人手問題や環境の問題も含めて日本だけでは介護能力には限界があるなと思いました。その中で、日本に変わる良い環境のある場所はないだろうかということで探してたんです。私は個人的にタイの情報というのはほとんど知らなかったんですが、こういった事業に携わっていると自然に、介護などマンパワーのサービスにはタイ人やフィリピン人など、アジアの方々が多く従事しているという情報は多く入ってくるわけです。それじゃあ、ひとまずその国に行ってこの目で確かめてみようと。

遠藤 :なるほど。それでタイに視察に行ったというわけですね。

椛澤 :そうです。やはり実際に行ってこの目で確かめなければと思いまして。日本だけで介護能力は完結できないし、介護はマンパワーの仕事だけに、歩みよらなければ事業の展開はできませんからね。今の日本の法政ではなかなか海外の方が日本で働くのは大変ですが、将来のために何が日本に必要なのかときちんと見なくてはと思ったわけです。そう思っていた時に、三菱系列の企業で国際的に活躍なさってる方とのお付き合いがあったんですが、その方が「じゃあ、一緒にタイに行こうか」と言ってくださったのをきっかけに、タイに行くことになりました。ですので、私はもともとタイが大好きで思い入れがあって事業を始めたというのとはまったく違う次元で、今働いているんです。今、私がこういったタイと関わる仕事をしているのは一番は人と人との縁だと思っています。

遠藤 :具体的に、どんなことが縁だったと思いますか?

椛澤 : 実はタイで初めて出会ったDr.ナロンという有名な医師と出会い、その方が今うちの顧問をしてくれているんです。タイへ行った時に、アテンドをしてくれるという人が2人いたんですが、最初に会うはずだった人はタイ時間でえらく遅れてマイペンライでやってきたんですよ。それで、次に会うはずだった三菱系の関係があった方と先に会うことになり、10分20分の雑談の中で、介護の話を少ししたんですね。そうしたら彼が何を思ったか、それならこういう人がいるんだけどということでDr.ナロンを紹介してくれたんです。Dr.ナロンは世界的にも活躍してて大変忙しい人だから会えるかどうかわからないけど、という話をしつつその場で携帯で連絡を取ってもらったら「ぜひ会いたい」と言っていただいて、会うことになったんです。それで会いに行ったら、彼がロングステイのことについて蕩々と語ったんですよ。私はその時、マンパワーの確保などそういった目的の視察で行っていて、ロングステイのことなんてまったく考えたことがなかったんですが、彼と出会ったことが一番のきっかけになってロングステイ事業をスタートさせることになったんです。

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遠藤 :それが2000年くらいだったんですか?

椛澤 : そうですね。2001年の初頭くらいだったかもしれません。タイへ視察に行く前は、タイに行った後はフィリピンやマレーシアにも行ってみようと思っていたんです。ところがタイでどんどん話が進んでいったんですね。それまで、ケアワーカーの養成をしたいという部分で地道に活動していたんですが、介護という形で海外のケアワーカーを呼び寄せるだけでなく、生理的な相性が合えば自分たちが海外に行くのもいいのではないかと。海外から人を呼ぶには法制の問題もあり難しいことが多いですから。日本は今後、言う間でもなく少子化でマンパワーが減り経済環境が低下していきます。収入は下がって支出は増える。そして医療保険、介護保険も上がってきたり、非常に暮らしづらい世の中になってくると思うんです。そういった状況の中で、ロングステイを推奨するのはひとつの大きな意味があると確信しました。もし、ロングステイに出向くとしたら何が動くかというと、人が動けば生活サービスが動くんです。暮らしづらい環境の一番の要因は情報が入らないということなので、うちは様々な情報を提供し、暮らしやすい環境を整えてあげたいということなんですね。どんなものが生活サービスなのかというと一番シリアスな問題としては医療の問題があります。その後に洋服だ食べ物だと続いていくと思うんですが。そういった中で海外でロングステイをしようとする場合、きちんとした介護サービスがあるというのはとても重要な問題ですし、安心材料になります。ただ、リタイヤして、海外でロングステイをしてみたいという60歳の方がいたとして、“介護”という言葉を使うと、「ふざけんな、俺はまだ若い! 介護なんて必要ない」と、抵抗感がある方もいますね。ですので、当社としては“シニアリーディングサービス”として、様々な生活サービスのサポートを行っていきます。この言葉は、マリオットというホテルグループが使っていたんですが、このネーミングをとても気に入ってこれがヒントになって最近では使ってるわけですけども。

遠藤 :なるほど。確かに介護という言葉は日本ではとても重い印象がありますからね。

椛澤 :そうなんです。言葉の問題なんですが、シニアリーディングサービスという言葉を使えば、ロングステイも生活サポートも医療サービスも含めてサービスを提供することができるというわけなんです。今年は、国内の介護も含めて、海外の介護もロングステイもひとつの部門としてまとめあげていきたいと思っています。



タイには人の心をほっとさせる
「やすらぎ」と「温かさ」がある

遠藤 :タイでのロングステイを推奨にするにあたって、タイの印象はいかがでしたか? 良いものでしたか?

椛澤 :タイは日本人にとってとてもフィット感がある場所だなと思いました。やはりタイに行く前も、また、行ってる時もそうでしたが、タイはあまりいいイメージがなかったんです。なんというか男性天国のようなイメージばかりが先行してしまって。非常に猥雑だし、綺麗じゃない。それが客観的に見たタイのイメージだったんです。ところがね、タイを何回か往復していた時に、ある時ふと安らぎを覚えたんです。安らぎっていうのは人の気持ちが出すものですから、その空気感を感じたんです。そういった雰囲気や空気感は理屈で感じるものではなく、生理的に感じるものです。バンコクには人口の4分の1が集中していて大都会ですけど、日常生活の中であぶり出されてくる人情というか人の心の温かさがたくさんあふれてると思いました。日本が乾ききった時代だけに、よけいにそう感じたんだと思います。それが、タイへ大きな好印象を抱いたひとつの大きな要因です。

遠藤 :ではもし、この印象がなければ……

椛澤 :タイでのロングステイ事業は進めてなかったかもしれませんね。もともとケアワーカーの人に来てもらうっていうのは一番最初の計画にありましたから、それはやってるでしょうけどね。

遠藤 :ロングステイ事業の他に、今後は具体的にどんな展開をしていく予定ですか?

椛澤 :ケアワーカーの養成をどんどん進めていきたいと思っています。タイというのはきっかけであり、ひとつのビジネスモデルになると思うんです。ここで学んだものを、今後、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどに今後展開していきたいですね。アジアの良い部分は、安い介護労働力です。この人たちを日本を含めた介護を必要とする場所に派遣して紹介していきたいと考えています。我々は介護事業の大きなネットワーク、受け皿を作りたいんです。

タイの素晴らしい伝統的な技術を
日本で普及させていきたい

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遠藤 : 御社では大阪の高槻に「テラワン」というマッサージサロンも経営なさってますね。

椛澤 : ええ。タイの保健省の中の、「タイ・トラディショナル・ディベロップメント・ファンデーション」という財団と縁がありまして、その中でタイマッサージを日本で振興していくという部分で契約を結びました。一体どういうことかと言いますと、タイのマッサージを医学的、科学的に10年間かけて検証したトリートメントをスタンダード化して、タイの伝統をきちんとした形でタイ国内外に普及して行こうということなんですけど。うちとしては2つの方法があって、ひとつは末端ながら介護のヘルパーさんに無償でこのトリートメントを教えて、無償でデイサービスなどでも提供していこうと。こういう形で予防介護の中に、マッサージを確立していければと思って。日本の介護の利用者にタイマッサージを通して、タイの伝統を普及できないだろうかと。まぁ、これはビジネス的にというよりは社会性の方が大きいですね。そして、もうひとつ、マッサージを核にして作ったのが、その「テラワン」というサロンなんです。

2005年の10月に高槻に当社の介護施設がオープンしたのでが、そこの1階でパイロット的にスタートしたんですけどね。ここの正式なライセンスとしてはタイロイヤルセラピーと銘打ってフットマッサージとハーブボールセラピーを展開しているんですが、それだけではお客様に対してのアピールが弱いので、独自のボディトリートメントと岩盤浴、ミュージックセラピーを組み合わせています。お客様の支持が得られれば今後は店舗展開していきたいですね。今後大きく展開していく中で、やはりセラピストの養成をしていかなくてはいけないですね。ですが、現在、非常に人手不足なんです。今、いろんなホテルにもスパが入っていますが、そういうところも人手不足で困っていると相談を受けることもあります。ですので、ぜひタイロイヤルセラピーのスクールをやってきなくてはと考えていますよ。きちんと教育してきちんとした技術を身につけたものがきちんとした形で日本に素晴らしい技術を普及させていきたいですね。

遠藤 :ぜひ、それは実現していただきたいですね。

椛澤 :それからもうひとつ。うちが問題視し取り組んでいる中の一つに、ケアワーカーの養成もあるんです。現在、介護に顔を向けた医療がないということはとても問題だと思います。介護も医療も手を取り合って一緒に歩いていかないといけないものなのに、現状では医療から見たら介護はとても下の位置にある。マッサージなども通して、多くの人に心地よい生活を提供していきたいと思っているんです。

遠藤 :なるほど。具体的にどんな状況になればいいと考えていますか?

椛澤 : 私が一番タイと関わる部分でアピールしたいのは、保健省のロイヤルセラピーの普及についてですね。多くの、特に在日のタイ人にセラピストとして振興に協力したいという人がいれば、我々もライセンスに基づいた技術を正しく伝承し、普及させていきたい、それがゆくゆくはタイの方々の就労にも繋がっていけばいいですよね。日本における「タイ人倍増計画」を進めているワイワイタイランド社や、日本タイ料理協会でタイ料理の普及に努めていらっしゃる遠藤さんとは、ぜひその辺でいろいろ協力していければいいなと思いますね。

遠藤 : そうですね。お互いタイマッサージの普及やタイでの快適なロングステイのためにアイデアを出すなど協力しあって、もっと日本で暮らすタイ人、タイで暮らす日本人のために良い事業を展開してきましょう! 今日はどうもありがとうございました。



遠藤 誠(えんどう まこと)プロフィール -
1987年 新宿・歌舞伎町でタイ人専門の万屋を始める。
1992年 日本語が分からないタイ人のための生活サポート番組 「Go! Go! タイ人」を考案・運営。
1995年 在日タイ人のためのタイ語新聞「BANGKOK TIMES」発行。
1998年 タイの貧しい地域へのボランティア活動「アイウン」を開始。
1999年 日本語・タイ語の情報誌「WaiWai THAILAND」発行。
2003年 東京・代々木のタイ・フード・フェスティバル公式テーマソングを考案・製作。
2003年 タイ文化の総合イベント「Little THAILAND」の発案・企画。
2005年 特定非営利活動法人 日本タイ料理協会理事長に就任。
2005年 タイに関する情報ポータルサイト「タイ王国ドットコム」の発案・企画。