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桂 由美(かつら ゆみ)プロフィール

株式会社ユミカツラインターナショナル代表取締役社長。日本初の、世界各国でショーを開き、ブライダル文化の伝道師と呼ばれている。アジアブライダル協会連合会会長、全日本ブライダル協会会長、NPO法人地域活性化支援センター理事など。

株式会社ユミカツラインターナショナル
http://www.katsura-yumi.co.jp/

1964年に日本初のブライダルコレクションを開催して以来、日本のブライダル業界を常にリードし続けている桂由美さん。今年(2009年)、デザイナー生活45周年を迎え、4月にはアジアブライダルサミットを静岡で開催するなど、ますますご活躍の幅を拡げています。日本はもちろん、世界各国のブライダル業界に多大なる貢献をしてきた桂由美さんとタイの意外な関係、またタイを含めたアジア諸国の伝統的な民族衣装・婚礼衣装に対する想いを語っていただきました。

アジア各国のブライダル文化を守るため、
1995年にアジアブライダル協会連合会を結成

遠藤 :先日は12月5日のタイ王国・プミポン国王陛下の御誕生日祝賀レセプションで楽しく歓談させていただき、ありがとうございました。
あらためまして、タイとのご関係について教えてください。

桂 :1995年に、タイをはじめ、インドネシア、韓国、中国、フィリピン、マレーシアのアジア各国に呼びかけて、日本を含めた全7ヵ国でアジアブライダル協会連合会を結成しました。それをきっかけに、2年後の1997年に初めてタイを訪れました。

遠藤 :当時のタイの印象はいかがでしたか?

桂 :素朴で親切な人が多かったです。バンコクの渋滞は東京以上にすごいですね、びっくりしました。

遠藤 :人のやさしさは変わりませんが、渋滞は今の方がもっとすごいです(笑)。

桂 : タイシルクはずっと使ってきましたが2008年にもジム・トンプソンの生地を使って、ウエディングドレスをデザインしましたよ。

桂由美(かつら ゆみ)さんにお話を聞く遠藤誠(えんどうまこと)

遠藤 :素敵なデザインですね。タイシルクの美しさが際立っています。

桂 :タイは美しい伝統的な婚礼文化や衣裳がたくさん残っていますね。
ヨーロッパを中心に洋装化が進み、民族服を着た伝統的な結婚式は姿を消しつつあります。普段の生活で洋装が普及することは機能的で働きやすい装いですから仕方がありません。でも、共存共栄の意味からも冠婚葬祭の時は、その国の伝統色を出した方が良いですよね。その思いを、各国の大使の奥様方に集まっていただき、提案したことがきっかけで、アジアブライダル協会連合会を結成しました。

遠藤 :何故、ヨーロッパでは伝統的な民族衣装を着た結婚式が消えつつあるのですか?

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桂由美さんデザインのジム・トンプソンの
タイシルクを使ったウェディングドレス
(2008年制作)

桂:ヨーロッパ諸国では、結婚式のときに衣装を一着しか着ないんですね。そうすると自国の民族衣装よりもウエディングドレスの方がモダンでずっと着やすい。又民族服はハンドメイドなので値段が高くて、着苦しい、重いなどの理由でだんだん着なくなってしまいました。
一方、アジア諸国でもウエディングドレスが浸透してきましたが、たとえば日本の結婚式では、神聖な儀式があって、宴会では晴着に着替えるという習慣があります。タイも、二日にかけて婚礼が催され、一日目と二日目で衣装を変える、それならば、一日は洋風のウエディングドレスで式を挙げてもいいじゃないですか、という提案ができますよね。私は洋風のファッションと自国の伝統衣裳の両立とアジアの婚礼の特色にしてゆくべきと考えているのです。


遠藤:今年(2009年)は4月に日本で「アジアブライダルサミット」の開催を予定されていますね。


桂:静岡県静岡市のグランシップで、4月10日(金)〜11日(土)の2日間にかけて開催し、アジア各国の伝統的な婚礼儀式と婚礼衣裳が発表されます。1995年の最初は東京で開催して、その後は毎年各国の持ちまわりにしましょうと決めました。その後、アジアの加盟各国で毎年開催していますが、実はタイの開催だけは唯一未だにありません。

遠藤:えっ、タイだけ開催されていないのですか!

桂:未だにタイにブライダル協会ができないので、「アジアブライダルサミット」を主催してくれるところがありません。1995年のアジアブライダル協会連合会結成当時は、ブライダル協会は日本とインドネシアしかありませんでした。アジアブライダル協会連合会の結成により、その後、韓国、中国、フィリピンにもブライダル協会ができました。マレーシアとインドもまだ協会はできていませんが、自国のブライダル文化をぜひ見てもらいたいという思いから「アジアブライダルサミット」が開催されました。でも、タイだけは何故か「アジアブライダルサミット」でさえ未だに開催に至っていません。

遠藤:タイは信仰の篤い国ですし、決して自国の婚礼文化を疎かにしている訳ではありませんが、そこはやっぱりタイらしいですねぇ(笑)。
タイをはじめ各国にブライダル協会を設立する必要性について教えてください。

桂:ウエディング業界も皆さんビジネスでやっていますから、何でも売れるものはつくってしまう。消費者の方は何の衣装が伝統か、美しい婚礼とは何なのか、分からないまま見た目のイメージだけで発注してしまいます。そうなると、伝統的な衣装や文化はだんだんと失われていきます。そこを指摘して導いてあげるためにも、婚礼に精通した有識者が集まり、人材を育成する機関が必要なのです。例えば、私たちの協会だと、ブライダルコンサルタントとウエディングプランナーという資格を与えています。タイも婚礼に関するリーダーの養成が必要だと思っています。タイにとっての婚礼文化をどのように後世に残していくかをきちんと考えていくためにも、早急にブライダル協会を設立して欲しいですね。

遠藤:タイにも桂先生と同じ思いの人が必ずいるはずです。タイにブライダル協会が一日も早くできますように、私たちも協力させていただきたいと思います。

桂:嬉しいですね、よろしくお願いします。

少子化対策でも
お互い協力し合いましょう

桂由美(かつら ゆみ)さん

遠藤 :桂先生は少子化対策にも尽力されていますね。

桂 :私は少子化の主因は非婚化にあると思っているので、非婚化対策と地域の活性化プロジェクトとして、2006年4月より各地の観光エリアや施設を「恋人の聖地」として選定し、情報伝搬力の高い若い人たちや熟年カップルに魅力ある観光やドライブ情報を提供しています。現在(2008年1月)、全国74ヵ所が「恋人の聖地」に制定されています。

遠藤 :3年足らずの期間で凄い数ですね。タイは76県あって、恋人が集う観光地もたくさんありますので、ぜひ「恋人の聖地」をタイにも加えていただき、日本人カップルもたくさん集うようにしていきたいですね。

桂 :もちろん大丈夫ですよ。どこか相応しい候補地はありますか?

遠藤 :そうですねぇ…例えば、バンコク・ラチャダムリ通りの伊勢丹前にあります「プラ・トリムーラティ」という神様が祭られている祠(ほこら)は、木曜日の夜9時30分にお祈りすると恋が叶うといわれていて、その時間になると毎週多くの若者が訪れます。ダイビングが盛んなトラン県では、水中結婚式が行われ、プーケット県にはバンジージャンプをしながら指輪交換ができる場所などもあります。

 

桂 :それぞれ興味深いですね。タイは日本人にも人気があって魅力的な観光地がたくさんありますし、ぜひ「恋人の聖地」を各地につくって多くのカップルが訪れるようにしたいです。条件さえ合えば海外を含めてどこでも参画できますので、地域の活性化の意味でも、積極的に手を挙げていただきたいです。

遠藤 :ワイワイタイランドではタイ国支援と少子化対策のために、日本人とタイ人の結婚を推奨しています。月刊誌『ワイワイタイランド』でたびたび国際結婚の特集を組んでいますし、毎年行っているタイの貧しい地域への直接支援「アイウンボランティア活動」では、支援地域の県知事と綿密に連絡をとり合いながら、日本人と結婚して末永く生活できるような方々を紹介していただいたりもしています。日本人とタイの親交も年々深まっていますし、同じ方向でこれから一緒に協力できるようにしていきたいですね。

桂由美さんのターバンの秘密

遠藤 :昨年出された著書『桂由美MAGIC』に、桂先生の「ターバンの秘密」が公開されていますね。

桂:たいした秘密でも理由でもないんですよ。人を綺麗にすることは仕事だし、美しいウエディングドレスをつくることは自信がありますけれどね。でも、私自身に関しては職人だと思っていますから、なるべく手間のかからないようにしたいんです。ターバンは簡単なんですよ、かぶれば済みますから、髪の毛が少しくらいのびたって大丈夫ですし。私みたいにデザインと経営を同時にやっている忙しさの中では、美容院に行く時間を減らすための工夫だった訳です。それだけなんですよ(笑)。

遠藤:TVや雑誌でいろんなデザインを拝見して、いつもとても素敵ですが、幾つくらいお持ちですか?

桂:20年近く身につけていますからね。100個くらいに増えていますよ。

遠藤:100個もですか!このことはたしか著書にも書かれていなかったかと思いますが。

桂:はい、数には触れていないですね。

遠藤:では、当社の独占スクープですね(笑)。これからも一緒にタイ王国を応援していきましょう。
本日は貴重なお話をありがとうございました。

 
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『桂由美MAGIC』 (集英社刊)
桂由美(かつら ゆみ)さんと遠藤誠(えんどうまこと)